人類の社会基盤が大きく生まれ変わろうとしています。
2022年11月、ChatGPTが世の中に登場して以降、社会はこうした生成AIに驚かされ続けてきました。
これまでのAIチャットは予め準備された回答を返すだけでしたが、ChatGPTに触れた人々は、まるで人間のような受け答えをするこの新しいAIに、従来とは全く別次元のテクノロジーであることを痛感しました。
そしてChatGPTは、わずか数ヶ月という短いサイクルで何度も人々を驚かせています。すでにハードルが上がったはずの状況で、それを軽々と飛び越える新しい性能を見せつけ、その魅力はテクノロジーの愛好家だけでなく、あらゆる業種、あらゆる立場の人にその可能性を感じさせ続けています。
2024年5月、ChatGPTを運営するOpenAI社は最新のAIモデル『GPT-4o』を発表しました。
この最新モデルは従来のAIモデルの2倍を超えるスピードと、更なる高精度を実現しています。文字だけでなく音声も直接解釈できるようになり、声でのシームレスな会話や、人間同士の会話の通訳すらもできるようになりました。
これまでに圧倒的な「熱狂」をもたらした生成AIは、ここに来て「必然」になろうとしています。
電気が「当たり前」になったように
パソコンが「当たり前」になったように
インターネットが「当たり前」になったように
生成AIを使ったビジネスや生活は、近い将来「当たり前」になるでしょう。そして、それは社会の、企業の、仕事の、さらには人材の価値を一変させます。
そんな時代に向けて、いま私達にできることはなにか。
何を知り、何を行うべきか。
本記事では、それを余すことなくお伝えします。
この記事を最後まで読んだとき、「ただ待つだけで社会の末席に追いやられる」のではなく、「自ら先行してより優位なポジションを獲りにいける」ようになってもらえると信じています。
ChatGPTをうまく使えない人が陥っている12の間違い
前述の通り、ChatGPTは登場してから1年以上のあいだ脚光を浴び続けています。
そして、その過程で多くの人々がその活用に興味を持ってきました。
実際に、多くの人や企業が自身のビジネスへの活用を目指して、検討や試行を続けています。
もちろんそれで成果を出した事例もありますが、その裏では多くの「失敗事例」が積み重なっています。
彼らはなぜ失敗してしまったのか。
これだけの注目を集めている高性能なはずの生成AIを、なぜうまく活用できないのか。
生成AIを最大限活用するために、まずはそうした失敗のポイントを確認しながらツールとしての特性や優位点の理解を深めていきましょう。
アプローチの間違い
まずは使い方以前の、AI導入の始め方に関する誤りを確認していきます。
ここで誤ると期待した効果を得られないばかりか、AIを過小に誤認し、競争において不利になる恐れがあります。
AIで解決したい課題が不明確
具体例
AIを活用することで何かを得たい。競合に遅れを取らないよう、何が得られるかを調査する旨のお達しを受けて、現場の担当者が技術調査を行ったが、有効な活用方法が見い出せなかった。
このケースの問題点
ChatGPTをはじめとした生成AIは非常に革新的ではあるものの、それでも「ツール」であることに変わりありません。そして、ツールは何らかの課題を解決するという目的を達成するための手段でしかありません。
今回のケースでは、目的のための手段ではなく、手段を使う手段を探してしまっており、そもそも何が見つかれば良いというゴールが考えられていませんでした。
調査を担当した技術者は経営や高い視座での課題を知らないため、自分の知識の範囲やSNSなど外部で言われている優位点を報告する形になってしまいます。
その結果、自社の課題とフィットせずに活用方法を見いだせないという結果になってしまいました。
どうすればよかったか
新しいツールやテクノロジーの調査というのは『どんな不可能が可能になったか』という観点で調べる必要があります。そして、その『不可能』の部分は、自分や自社にとっての内容でなければ意味がありません。
ブログやインフルエンサーは幅広い層に向けて多くの事例を発信しています。しかし、1枚の写真から1分の動画が作れるようになったことを、画像も映像も扱うことがない小売店の店長が知ったところで意味がありません。
まず自分や自社の足元にはどのような課題があるのか。会社員であれば上司や経営層はどのような課題を抱えているのか、何が達成できればその課題が解決できるのかを知っておくことが重要です。
それらを知ったうえでAIの調査を行っていれば、これまで気付けなかった活用方法が格段に見つかりやすくなります。
あなたの周りにもし「延々と情報収集をし続けている人」がいたら、この失敗パターンにハマっているかもしれません。
業務領域を無視した展開
具体例
ChatGPTによる生産性向上を目指し、AI推進部門が立ち上がった。この部門にはテクノロジーに精通したメンバーが集まり、それぞれの知見を活かしてChatGPTの活用事例を作っていった。
その後、AI推進部門の活用事例を添えてAI環境を展開したものの、実際に利用したのは一部の”新しいもの好き”なメンバーにとどまり、ほとんどの現場では使われることはなかった。
このケースの問題点
ChatGPTはよく人に例えられます。「新入社員」「秘書」「専門家」などとして仕事を手伝ってくれるといった表現が多いです。
今回、ChatGPTの推進を担ったのはAI推進部門でした。こうした部門を立ち上げたまでは良かったのですが、彼らはあくまで「テクノロジー」に精通しているだけで、各現場の業務内容については詳しくありません。そのため、活用事例もそれぞれが考えた汎用的なものにとどまっていました。
どんなにスキルを持った人がチームに入っても、チームの仕事や目的を知らなければ戦力にはなりません。同じように、AI活用もそれぞれのチームの仕事や課題、成果物などを前提として初めて力を発揮します。
こうした観点が漏れていたため、せっかくの活用事例も「こういう仕事があるところには役立つだろうね」という他人事として受け取られてしまい、現場での活用には繋がりませんでした。
どうすればよかったか
ChatGPTのような生成AIは従来のような”ツール”とは一線を画する高い汎用性と、より人間的な判断や発信ができる画期的なテクノロジーです。
しかし、生成AIについて詳しくない人にとっては、そうした差がわからず従来の”ツール”と同じように判断されがちです。活用事例だけではその応用力が伝わらず、事例に書かれたことだけができるツールだと理解され、そのまま使えるユースケースがあるかどうかで評価されることになります。
つまり、生成AIに詳しくない人にその可能性を感じてもらい、生成AIのポテンシャルを活かした活用に繋げるには、利用者にとってバッチリはまる『ユースケース』で示してあげることが必要です。
そして、現場を知らない人だけでそんなユースケースを準備するのは不可能です。
活用事例を作る段階でテクノロジーに明るいメンバーと、実現場で課題を抱えているメンバーがコラボし、その課題をどのようにしてAIで解消、軽減できるかを考えていく。それこそが、現場で確実に活きる『ユースケース』が生みだす唯一の進め方です。
そうしたケースに振れた人が徐々にAIの特性を理解していくでしょう。「だったらあれもできるかもしれない」という気付きから他のユースケースを生み出し、生み出されたものはどんどん試すという動きが起き出せば、おのずとAI活用は広がっていくはずです。
過度な目標設定
具体例
AIが人間のように仕事をすると知った経営者が社員に対して「今後はすべての事務作業をAIに移行し事務部門は解体する」という方針を打ち出し、ChatGPTによる事務作業移行チームを立ち上げた。
このチームは既存の事務作業のリストと手順を受け取ってChatGPTによる自動化を試みたものの、どのようにアプローチしてもこれまで事務部門が実施してきたのと同じアウトプットを生成させることができなかった。
結局、長期間に渡って試行を続けたにも関わらず、目標を達成できないままプロジェクトが頓挫し、以後ChatGPTは利用禁止となった。
このケースの問題点
ChatGPTが人間のように仕事をするというのは間違いではありませんが、それは特性の一旦にしか過ぎません。にも関わらず、誤った認識でとても到達することができない過度な目標を設定してしまいました。
当然ながら、現場は何をやっても目標達成どころか、その道筋すら見えないまま、徒労感と失敗という最終結果だけが残りました。
どうすればよかったか
AIには得意、不得意があります。それこそ、人間のように。
力仕事が得意な人に資材の搬入を任せるのは良いですが、その後のメンテナンスや維持費の計算、帳簿の管理までさせようとすれば、きっと不得意部分で躓くでしょう。
適材適所という言葉がある通り、AIの得意・不得意もまた、人間のそれと同じように評価し、適所に当てはめることで初めて十分な力を発揮してくれます。
今回であれば、事務を完全に代替するのではなく、事務の現場で行われていた作業を細分化し、AIを取り入れることで効率化、部分的自動化、品質向上によるチェックや差し戻しの削減といった形で活用方法を探していれば、きっと成果はでていたでしょう。
AIの活用を目指すなら、まずは正しく特性を理解し、到達可能な目標を設定しましょう。
利用者の訓練不足
具体例
ある経営者がChatGPTを用いて自社の業務効率化を目指すことにした。この経営者はChatGPTの特性を学び、得意・不得意を理解して従業員に伝えるとともに、実際に現場に即した活用方法を見出してもらうため、各現場にAI活用担当を設置し、そこでの業務に即した活用方法を検討させることにした。
しかし、しばらくは検討が続いたものの、どの現場でも「能力不足で役立てるのは難しい」という結果となり、業務効率化を実現することができなかった。
このケースの問題点
ChatGPTのような生成AIは学習したデータを使って質問に回答する装置です。そのため、多くの質問に回答できる一方で、数ある回答の中から自分が欲しい回答をピンポイントでさせるためには、質問するためのテクニックも必要になってきます。
今回はChatGPTの特性や優位性を事前にしっかり伝え、現場メンバーの興味付けにも成功し、各業務領域での活用検討・試行もできています。しかし、現場メンバーは試行に向けた意欲は高かったものの、期待する回答を引き出す適切なテクニックを知りませんでした。そのため、なかなかゴールにたどり着けず右往左往する状況が続いてしまいました。
結果、せっかく正しい進め方をしたにも関わらず、期待した効果を現場メンバーが見つけることができず、目標を達成することができませんでした。
どうすればよかったか
ChatGPTを活かすためにはユースケースが重要であり、現場メンバーに動いてもらうための興味付けも必要ですが、それだけでは十分とはいえません。どれだけ戦意に満ちていても、武器も持たずに戦場にでれば成果を挙げることはできないでしょう。
こうした場合、各現場のAI活用担当者には更に高度な訓練が必要でした。
ChatGPTの活用を通して現場で成果をあげるには、多くのテクニックが必要です。
- 期待した回答を得るテクニック
- やりとりを通じて精度を上げるテクニック
- より多くの情報を省略せずに出させるテクニック
- 回答内容を安定させるテクニック
こうしたテクニックをしっかり身につけた人が取り組んでいれば、ゴールに向かって最短距離で駆け抜けることができます。取組みの結果もきっと変わったでしょう。
しかし、テクニックを持たない人だけで進めてしまうと、最初は興味で頑張るものの、なかなか思った成果が出せず、徐々に期待が失望に変わり、最終的には「期待したほどの効果がない」「世間で言われるほどの性能ではない」という結論になってしまうのです。
日本への鉄砲伝来は、ポルトガル人の商人を乗せた中国船が種子島に漂着し、彼らが現地の大名に鉄砲を売り込んだことが始まりと言われています。では、もし漂着した船に人が乗っておらず、積み荷だけが見つかったとしたらどうでしょうか。
鉄砲を初めて見た地元民は、木と鉄でできた謎の筒を武器とすら思わないでしょう。新しいテクノロジーというものは、知識のある人がその価値と使い方を伝えて初めて広がっていくものです。
新しいことを広げるのであれば、興味付けだけではなく正しい使い方をしっかり伝えていく。これが成功の大前提になります。
AIの限界に対する理解不足
具体例
あるプロジェクトマネージャーが顧客からの問い合わせにかかる工数を削減するため、これまでの問い合わせ内容とそれに対する回答を学習させて直接顧客に使わせることを企画した。
プロジェクト参加者がこれまでに対応した問い合わせのデータを集め、質問と回答を整理し、専門家の力を借りながらデータベースを作成してAIが参照できるようにした。
この過去データを参照可能なAIチャットが完成し、実際に顧客に使ってもらったところ、最初は上々の反応であったものの、徐々に顧客から「以前の回答と違う」「明らかに間違ったことを返してくる」といったクレームが増え始め、最終的に顧客はAIを使わず直接人に問い合わせる状態に戻ってしまった。
このケースの問題点
ChatGPTは入力内容を学習済みの情報と突き合わせ、最も「確率が高い」と判断した文言を組み合わせて回答を生成します。そのため、利用者の問い合わせ方によっては「過去のやりとりについて聞いている」と判断したり、「世間一般の認識について聞いている」と判断したりします。
残念ながら、こうした判断のゆらぎを制御し、常に完璧な回答をさせることは現在のAIには困難です。そうした限界の知識を持たず、実現不可能な目標を設定してしまったのが今回のケースです。
その結果、こうした「ゆらぎ」によって適切でない回答を受け取った人が徐々にAIを信頼しなくなり、気付いたときには誰も利用しないという状況になってしまいました。
どうすればよかったか
まず大前提として、ChatGPTをはじめとする生成AIは常に100%の完璧な結果を出すことはできません。この点が、従来の”ツール”との大きな違いです。
例えば計算機は、”計算”という決められたルールの中で常に完璧な回答をします。一方、生成AIはこの決められたルールという縛りを無くし、あらゆることに対応することができます。しかし、それに対する代償として、回答の完璧性が低下しているのです。
通常、クライアントに対して間違ったことを伝えるのは許されません。どうしても間違ってしまうことはありますが、少なくとも始めから「間違えるかもしれないけど答えますね」というスタンスは認められないでしょう。
よって、現時点では100%の回答ができないAIを直接顧客に使ってもらうというアプローチは適切とは言えないでしょう。正しい知識を持っていれば、こうした問題に気づくことができたはずです。
ある自治体が住民からの問い合わせに回答するAIの開発をしましたが、やはり同じ理由でプロジェクトが失敗したという事例もあります。
ですが、あくまで間違う可能性もあると理解した上で、内部で利用するのはどうでしょう。顧客からの質問を内部の担当者がAIで確認し、その内容が正しいかをチェックして人が回答するのです。
一見、結局人が動いているように見えますが、実は動いている人を入れ替えることができます。プロジェクトの有識者は基本忙しく、時間のない中で質問対応もしなければなりませんでした。しかし、若手など他のメンバーが回答案まで作り、正否のチェックをするだけなら大きく負担は軽減するはずです。
人間の負荷の軽減、分散もまた、AIの効果的な活用方法の1つです。
使い方の間違い
次は実際にChatGPTを使う際の誤りです。AI活用の担当者や自分自身でAIを活用したいと思っている人、個人事業主や一人社長はこちらも押さえておくと良いでしょう。
必要な情報を与えずに作業をさせてしまう
具体例
ある製造業のマネージャーが、新製品の市場投入戦略についてChatGPTに相談したが、全く見当違いの回答が返ってきた。
このマネージャーは「良いマーケティング戦略を教えて」とだけ質問していた。
毎回それっぽい回答があるものの、自分たちに適合する回答は数十回に1回もなく、返って生産性を落とす結果となってしまった。
このケースの問題点
しっかり言葉にしなければ伝わらないのは人間もAIも同じです。そして、自社開発でもない限り、AIは自社の情報や前提、背景を知らないため、前提となる情報から説明する必要があります。
今回の事例でマネージャーが問い合わせた新製品は高性能な工業用機械であり、主なターゲットは中小企業の食品加工業者でしたが、そうした業界、目的、ターゲット顧客などの詳細情報がなかったため、ChatGPTはそれらを推測しながら回答を生成することになります。
その結果、ChatGPTの回答は「SNSでのプロモーションを強化する」や「顧客のニーズを調査する」といった広範なアドバイスに留まり、マネージャーは業界や製品の特性に合わせた具体的な戦略を得ることができず、結果「使えない」となってしまいました。
どうすればよかったか
例えば、会社内の出来事を雑談として誰かに伝えたいとします。このとき、伝える相手によって説明する内容は全く変わってくるはずです。
同じ会社の同僚や上司であれば、業界事情はもとより自社の動きや登場人物の特性など多くの前提情報を互いに把握しているため、最小限の伝達で同じイメージを共有できるでしょう。
「こないだ○○部長がまた✕✕って主張してたぜ」
『相変わらずひどいな(笑)』
しかし、例えば業界事情すら全く知らない家族や友人に話す場合はどうでしょうか。そもそも話のオチを理解するための前提となる業界の常識や、会社のルール、登場人物の特性など、周辺情報まで説明しないと話が伝わりません。
「現場に詳しくないくせにやたら頑固な○○っていう部長がいてさ」
「うちの業界には△△っていう大原則があるんだけどさ」
「それを知らない○○部長は全然逆の✕✕をすべきだって主張しつづけてるんだよ」
『それはひどいな(笑)』
ChatGPTから的を射た回答を得たければ、できるだけ具体的で詳細な情報を伝える必要があります。そうした情報があることで、AIは内部の知識からより適合率の高い回答を選択してくれるのです。
AIの活用には、まるで家族や社外の友人に自社の出来事を話すように、前提や周辺状況の知識をしっかりインプットしてあげることが重要になります。
本当に解決したいことが伝えられていない
具体例
教育機関のスタッフが、オンライン学習プログラムの効果を高めるための方法をChatGPTに相談したが、ありきたりな回答しか得られなかった。学習プログラムの詳細や主な受講者の情報なども渡してみたが結果は変わらなかった。
このケースの問題点
このケースのスタッフが知りたいことは確かに「オンライン学習プログラムの効果を高めるための方法」でしたが、その背景には「参加者のエンゲージメント低下」「ライブセッションへの参加率低下」という具体的な課題がありました。
つまり、本来的にAIに解決して欲しいことは「参加者のエンゲージメントが低下」「ライブセッションへの参加率低下」の解決策だったはずですが、その点を質問者自身が理解できておらず、単に「オンライン学習プログラムの効果を高めるための方法」を聞いてしまったため、「コミュニケーション機会を増やす」や「フィードバックを強化する」といった広範な提案に留まり、現状に則さない回答になってしまいました。
どうすればよかったか
質問の仕方というより、質問者による問題点の整理が重要なケースです。
仮に上司から「オンライン学習プログラムの効果を高めるための方法を調査して」と言われた場合、そのままAIを使わずにその調査依頼の背景を聞けば、「参加者のエンゲージメントが低下」「ライブセッションへの参加率低下」という真の課題にたどり着くことができ、それをAIに伝えることができたでしょう。
AIで課題を解決する場合、課題の背景や真因をしっかり把握し、真に解決して欲しい課題を伝えることが重要です。人や外注先へ仕事を依頼するときにも注意すべきことですが、AIに指示を与える場合も同様なのです。
最終目標を丸投げしている
具体例
事業を始めたいと考えた人が、ChatGPTに「私のビジネスを成功させるための全ての戦略を教えて」と質問した。質問者は事業の立ち上げ経験がなく、ChatGPTにすべての計画をたててもらい自分は実行すればいいという状態を期待していた。
しかし、何度聞いてもChatGPTは『ビジネス戦略とは何か』『ビジネス戦略を立てる方法』を返すばかりで、自分のためのビジネス戦略そのものを得ることはできなかった。
このケースの問題点
ChatGPTは万能ではなく、具体的なデータや専門知識が必要な戦略策定においては限界があります。また、多くのことをまとめて実行することも得意ではありません。今回質問された「ビジネス戦略を立てる」という過程では、商品設計や市場調査など多くの作業が必要でした。
ChatGPTはこうした中間作業を一気に行うことができないため、大まかな概要や大きすぎる目標を達成するための段取りを答えるしかなくなっていました。
どうすればよかったか
ChatGPTが返してきていた『ビジネス戦略を立てる方法』は、ある意味でヒントでした。最終目標に至るまでの工程の分解をしてくれているので、その単位に分けてChatGPTを駆使すれば、更に掘り下げた情報を得ることができたでしょう。
とはいえ、今回は事業立ち上げの初心者なので、回答された『ビジネス戦略を立てる方法』だけでは先に進めなかったかもしれません。この様なケースでは、その情報を更に深く掘り下げ、自身の理解を深めることが効果的でしょう。
例えば『ビジネス戦略を立てる方法』について、ひとつひとつの工程で必要となる入力(前提)情報と、その工程を終えることで出来上がる出力(結果)情報は何かを確認します。
そして、入力情報が例えば商品の概要であれば自身が考えていた商品の情報を、自身が知らない情報であればChatGPTを駆使してまず入力情報自体を集めていきます。
このように、大きな最終目標は分解して段階的に進めることでChatGPT活用が可能になります。ChatGPTのアドバイスを参考にしつつ、自身の専門知識や追加の市場調査を組み合わせることで、ビジネス戦略の構築という目標を達成することができたでしょう。
必要情報を見誤っている
具体例
あるチームのリーダーが、定例ミーティングの結果からより深い気付きを得ようと毎回ミーティングの議事録をChatGPTに読み込ませてアドバイスを求める運用を開始した。
しかし、新たな観点に気づくことは稀で、議事録にまとめられた内容をオウム返しするような結果が大半であった。
あるとき、ミーティング時に行うべきであった重要課題の確認漏れが発生したが、残念ながらChatGPTはこうした漏れの発見にも役立たなかったため、結局リーダーはこうした取組みをやめてしまった。
このケースの問題点
そもそも与えている情報が「今回のミーティングの議事録」であったため、ChatGPTもその範囲内でしか気づくことができません。また、与えられた情報も人が編集した「議事録」であったため、議事録担当者が見落とした、削った内容もChatGPTは知ることができませんでした。
チームは同じ目標に向かって長期的に動き続けるものであり、そこには「時間の連続性」があります。リーダーはそうした環境下で役立つ情報を求めていたはずですが、その期待に対して与えた情報がマッチしておらず、期待の回答を得ることができませんでした。
どうすればよかったか
現在はWeb会議やハイブリット会議が主流であり、仮に対面会議でも会議ツールを使うことでトランスクリプト(会話を文字起こししたもの)を容易に取得することができます。
こうした情報をChatGPTに与えて要約させることで、人間の思い込みによる情報の欠落を防ぎ、かつ完結な要約に落とし込むことが可能になります。
ChatGPTに過去の議事内容の要約を読み込ませたり、過去の要約から監視を継続すべき項目をAIに再抽出させたりすることで、更に精度を上げることができたでしょう。
フィードバックの欠如
具体例
開発企画の担当者が、自社のソフトウェアに追加すべき新しい機能のアイデアについてChatGPTに質問した。しかし、指示文を調整しながら何度か試みたものの、回答が的外れであったり抽象的であったりしたため、そこでChatGPTの利用を諦めてしまった。
このケースの問題点
そもそもChatGPTのような対話型AIはその名の通り「対話」を通して答えを出していくものです。
今回は利用者がAIを魔法のように認識してしまい、得たい回答がすぐに出てくることを期待したものの、結果的にはそうはならず、「所詮こんなものか」と早々に判断してしまいました。
どうすればよかったか
人間同士の会話でも、必ず対話による「フィードバック」で期待する回答にたどり着いていきます。
「小麦を使って何かつくれないかな?」
『お好み焼きなんかどう?』
「あ、ごめん、お菓子系で」
『ああ、それなら私はシフォンケーキが好きかな』
「ありかも。子どもが好きそうなもので言ったら他にある?」
『じゃあクッキーは?型抜きとか一緒にできて良くない?』
「それめっちゃ良い!」
AIも同じです。疑問を入れたら魔法のように最高の回答が得られるなんてことはありません。最初から対話していくことを前提に、まさに上の会話の例のように「自分の期待」と「AIの回答」との、ギャップのフィードバックを繰り返していけば、より実践的な回答が得られたかもしれません。
更に、こうしてやりとりをすることで自分の頭の中も整理されていきます。
悩みを誰かに相談し、人と会話しているウチに良いアイデアが浮かんだ。という経験は、誰もが一度はしたことがあると思います。AIとの対話でも、まさにこれと同じことが期待できます。
口調・慣習・言語を指示していない
具体例
ある若手の社員が初めて役員に報告メールを送ることになった。ビジネスメールの体裁に不安があった彼はChatGPTを使ってメール文章を作ることを試みた。
伝えたい内容や送信者と受信者の情報などの前提を伝え実際にメール本文を作らせてみたところ、意味が通る内容にはなっていたものの、「尊敬する役員殿」など、明らかに表現としておかしな内容が出力されてしまった。
こうした表現を使わないようにフィードバックもしてみたが、節々に文章の違和感が残るため、結局自分でネットを検索してメール作成を行うことにした。
このケースの問題点
ChatGPTはインターネットで閲覧できるすべての情報を学んでいると言われています。
では、そんなインターネット上の情報で最も多い言語は何かと言えば、間違いなく英語です。また、日本語の文章はシチュエーションによって様々に変化します。生成AIが出力する文章は、そうした様々な要素に引きずられながら行われます。
今回はメールの目的や背景はしっかり伝えていたものの、言語や習慣についての情報が不十分だったため、こうした文章が作られてしまいました。
どうすればよかったか
Dear ◯◯
英語の文面はよくこんな書き出しで始まります。直訳すると「親愛なる◯◯へ」となります。そして、ここに「役員」という目上の存在が入ったことで、親愛なる→尊敬するという部分的な修正が行われたのだと推測されます。
現在はAIの性能が上がってきており、こうした文章の違和感は徐々に改善されてきています。それでも、言語特性の齟齬や習慣を間違って適用するなど、細かい違和感が残ることも多いため、最大限避けようと思うなら、言語や商習慣はしっかり伝えるべきです。
「日本のビジネスマナーに則って」
「日本の商習慣を踏まえて」
そんな指示文を加えるだけで、出力結果は大きく変わったことでしょう。
事実確認を怠る
具体例
システム会社のマネージャーが顧客から自社で実績のない新しいサービスの開発を求められた。しかし、実現方法どころか、そもそも技術的に可能なのかもわからなかったため、ChatGPTに要求事項を伝え実現方法を質問した。
すると、顧客の希望を実現できるテクノロジーの名前と概要を発見することができた。そこでマネージャーは、その情報をもとに対応可能である旨を顧客に伝え、実際にプロジェクトが開始された。
しかし、いざ現場でエンジニアに作業を指示したところ、そもそもChatGPTが示したようなテクノロジーは存在しておらず、要求された事項が実現不可能であることが判明した。
マネージャーは顧客に謝罪し、なんとかプロジェクトは白紙に戻ったものの、顧客からの信頼を失ってしまった。そして、同社内でのChatGPTの利用は禁止されてしまった。
このケースの問題点
そもそもChatGPTは知識の中から「最も確率の高いもの」を返す装置であり、質問の意図に対して保証された回答を返すものではありません。
また、ChatGPT自身が自分の持っている知識を誤認することもあり、実際には存在しないテクノロジーや解決策などを、さも事実であるかのように回答することがあります。これを『ハルシネーション』と呼びます。
今回はこのハルシネーションを考慮せず、AIの回答の事実確認を怠ったことが問題でした。
どうすればよかったか
ChatGPTの様なAIは常にハルシネーションのリスクがあるため、その回答を公に用いる場合、内容が真実であるかの確認、つまりファクトチェックを行わなければなりません。
それではAIを使う意味がないと思う人もいるかもしれませんが、そもそも人間がまとめた情報であっても、外部に正確な情報を発信するための上司やリーダーによる確認の過程は必ず踏まなくてはなりません。
そういう意味ではチェックの手間があることは同じです。また、「何から調べて良いかわからない」といった状況では、AIから調査の取っ掛りが得られるため、調査の初速は段違いに向上します。
いずれにせよ、ファクトチェックは必須ということです。
失敗しないための心構え
ChatGPTを使うことで、業務の生産性、品質は確実に向上させることができます。
しかし、そのためには注意しなければならない点があります。
ChatGPTを使うことが目的ではなく、ビジネスの課題を解決し、加速することが目的であるということをしっかり念頭におき、ChatGPTの特性を知り、活用に向けた環境や体制を整え、実現可能な目標を定めて検証を行っていく必要があります。
ここまでに記載してきた失敗例は、裏返せば成功に向けてやるべきことになります。これらの内容を踏まえてしっかり準備し、同じ失敗を行わないように常に注意しながら、前に進めていくと良いでしょう。
それを自分たちで進めるのが難しいのであれば、AIの活用を伴走してくれるサービスの活用も検討してみてください。
AI活用の実現ができれば、その効果を通じて投資費用を回収できることでしょう。
ChatGPTの重要機能8選
ChatGPTができることを理解する
ChatGPTの現実的な活用には、ビジネス課題と、ChatGPTにできることの掛け合わせを正しく行う必要があります。そこで、次はChatGPTにできることをまとめていきます。
日頃からの悩みや、洗い出したビジネス課題の解決に役立つ機能がないか、ぜひ突き合わせてみてください。
文章の生成(質問・要約を含む)
概要
ChatGPTは自然言語を理解し、文章を生成することができます。これはChatGPTを始めとした対話型AIの最も基礎的な能力であり、これによって様々な作業をAIに自然言語で指示できるようになっています。
質問への回答や、文章の要約、創造的な記事の作成など、様々なタスクに利用できます。
認知度にもよりますが、考え方としてインターネットから得られる一般に知られた情報は、たとえどんなに専門的なことであってもChatGPTとのやりとりを通して見つけることができるでしょう。
利用例
最も基礎的な機能であり、活用方法は無数にあります。
以下に簡単な一例を列挙してみます。
- 新人がビジネスマナーに則ったメールの文面をつくる
- 技術者が知らない技術についての情報を得る
- ライターが記事の構成や本文を作る
- マーケティングのためペルソナを作成する
- 特定の立場にたった意見を聞き想定顧客のニーズやインサイトを知る
- 現状起きている課題を伝え解決策を相談する
WEBからの情報取得
概要
ChatGPTはある特定時点までの情報を学習し、そこで得た情報に基づいて回答します。逆にいえば、それ以降のことは知らないため、本来であれば答えることはできません。
もちろんこの学習期間は定期的に更新されているものの、例えば「今朝のニュースに関すること」となると、回答は困難です。
しかし、現在のChatGPTは自らネット検索を行い、その検索結果を元に回答を生成することができます。この機能により、学習期間に関わらず様々な最新情報に基づく回答が可能になっています。
利用例
この機能の利用例は「ネット検索の肩代わり」と考えるとわかりやすいです。
- 最新のニュースについて要約する
- 記事や論文などのURLを渡し、参照先の内容にをわかりやすく要約する
- 求人などの一覧情報を参照させてニーズにマッチしたものを抽出する
画像・ファイルのアップロード
概要
ChatGPTは画像やExcel、PDFといった様々なファイルを扱うことができます。この機能を使うことにより、これまで言葉で伝えなければならなかった様々な情報を直接ファイルで受け渡すことができるようになりました。
利用例
どんなファイルを渡すかによって様々な作業を依頼することができます。工夫次第で業務活用の幅が広がる重要な機能です。
- PDFファイルをアップロードして内容の要約や記載内容の質問をする
- 英語のPDFをアップロードして日本語で要約させる
- ボンネットの写真をアップロードしてどこをいじれば良いか質問する
- コンピューターのエラー画面をアップロードして解決策を質問する
- ホームページの画像をアップロードしてデザインのアドバイスや評価を聞く
- 食材や冷蔵庫の中身の写真をアップロードして献立のアイデアをもらう
- 住所の一覧をアップロードして「都道府県」「市区町村」などに分割させる
データ分析(CSV、Excel等)
概要
ChatGPTはCSVやExcelファイルを解析し、データの視覚化や分析を行うことができます。
データ分析は様々な現場で行われる汎用的な業務であり、最も直接的に業務活用できる機能です。Excelのデータから何かをまとめるといった作業の殆どは肩代わりさせることができます。
利用例
企業からSNSインフルエンサーまで多くの業種、役割で活用できる機能です。
- 顧客アンケートの結果を集計し表とグラフ、傾向分析、洞察を出力させる
- 売上データから期間、地域、商品ごとの売上分析とトレンドを把握する
- 購買履歴データから商品ごとの顧客セグメントや満足度を分析する
- プロジェクトの進捗情報から進捗の評価や人ごとの負荷状況を確認する
- データとその分析結果から抜けている観点を指摘してもらう
- SNSやブログのアナリティクスから反応が良いものの共通点を探る
- ストレングスファインダー(*)と人事評価から良い人材の傾向を掴む
- 毎月の支出情報から支出の最適化案を作成させる
* ストレングスファインダー:米国のギャラップ社が開発した世界的に有名な才能診断ツール。
音声会話
概要
ChatGPTは音声認識技術を利用して、音声入力に基づいた会話を行うことができます。従来は音声を文字に変換してから扱うため返答に5秒~10秒かかり実用性は低い機能でしたが、GPT-4oの登場でこの反応速度は劇的に改善され、現在はWeb会議越しの人間との会話とほぼ同等の反応速度になっています。
利用例
音声で操作できるというだけでなく、音声だからこそできる使い方もあります。
- 運転中など手が離せない状況でもChatGPTを利用できる
- 一方の言語を聞いたら他方の言語を発話させることで通訳として利用できる
- ChatGPTでの回答が利用できる用途であれば電話対応などにも利用できる
- 耳が聞こえない人に対して効率的な筆談を行うことができる
- 勉強の不明点を家庭教師がいるかのように言葉で質問することができる
- 英語学習で生の発音を繰り返し視聴、自分の発音のフィードバックを得られる
画像の生成
概要
ChatGPTはテキストの指示に基づいて画像を何度でも生成することができます。非著作物のみで学習されているため、商用利用も可能であることをOpenAIが名言しています。
利用例
画像が必要となる様々な場面で利用することができます。
- ブログのアイキャッチやイメージ画像の生成
- パワーポイントの挿絵の生成
- 商品やサービスのロゴの生成
- イメージキャラクターの生成
- SNSや社内コミュニケーションツール用のプロフ画像生成
- アニメやゲームなどのパッケージ画像の下絵を生成
この機能のビジネス活用方法は別記事で詳しく紹介しているので、気になる方はコチラも参照してみてください。
GPTsの利用(ストアでの取得)
概要
GPTsとは、特定の目的に特化し調整されたChatGPTのようなものです。事前に基礎的な指示や情報を与えることで、本来高度な指示文を作らなければ難しい仕事を簡単にChatGPTにさせることができます。
利用例
GPTsはいわばChatGPT内のフリーソフトのようなもので、世界中で様々なGPTsが作られ続けています。例を挙げるとキリがありませんが、その一部を下記でご紹介します。
- 簡単な指示で高品質な画像が生成できる「image generator」
- 質問に答えていくだけで簡単な記事が作れる「Write For Me」
- 様々な論文を検索し引用付きで質問に回答する「Consensus」
- ユーザーのプログラミングをサポートする「Code Copilot」
- ロゴ用に最適な画像の生成ができる「Logo Creator」
- 写真のような画像が生成できる「Photo Realistic GPT」
- 業種にあったビジネスモデルを提案・解説してくれる「びじねすもでるんβ」
- YouTubeの動画内容の要約を一瞬で生成できる「YouTubeGPT」
- 自分に役立つ日本の補助金制度をわかりやすく説明してくれる「補助金ヘルパー」
- グラフや流れ図など様々な図を作成してくれる「Diagrams: Show Me」
GPTsの作成、公開
概要
GPTsは使うだけでなく、作成することもできます。プログラミングの知識などはなくても、自然言語だけで作れるため、エンジニアに限らず多くの人がGPTsの作成に挑戦しています。
汎用的なものは既に多くのGPTsが公開されていますが、法人プランを使えば自社のデータに基づく業務に特化したGPTsを作り、それを社内に展開するといったことも可能になります。
目的に合わせてチューニングしたGPTsを作ってしまえば、AI活用スキルの高くない人でも一定の生成結果を得られるようになり、規模の大きい会社ほど大きな恩恵をうけることができます。
利用例
自社特化、自分特化でニッチなものを作るのが一般的な活用方法でしょう。
- 自社のルールや手順を事前に与え新規要員の質問対応をさせる
- チェックリストの項目を事前に与え文書レビューをさせる
- プログラムの作成手順を事前に指示し用途に応じたコードを生成する
- 部下指導の方針や学術情報をあたえ役職者の部下指導力を育成する
- AI側からの質問に答えるだけで自社ルールに沿った文書を作成させる
プランごとの違い
ChatGPTはプランによって使える機能や制限が変わってきます。目的に応じて契約するプランを選択すると良いでしょう。
非会員
一切のアカウント登録をしていない状態。この状態でもChatGPTにアクセスすることでチャットを行うことができるが、機能は著しく制限されており、最も初期のモデルと会話ができるだけになっている。
無料会員
ChatGPTにアカウント登録を行っただけの状態。費用は一切発生しないが、非会員と比べると使える機能が大幅に増える。
有料会員(Plus/Team/Enterprise)
個人向けのPlus、小規模チーム向けのTeam、大企業向けのEnterpriseプランが用意されている。基本的に殆どの機能が使え、プランによって金額や制限が変わってくる。
プラン比較表
各プランで使える機能、制限などは以下の通り。
機能 | 非会員 | 無料会員 | Plus | Team | Enterprise |
---|---|---|---|---|---|
料金(月額料金) | 0 | 0 | $20 | $25(年払) $30(月払) | $60(*1) |
利用可能モデル | 3.5のみ | 3.5 / 4o | ALL | ALL | ALL |
GPT-4oの利用制限 | - | 10回/5h | 40回/3h | 100回/3h | 無制限 |
チャットでのやりとり | ◯ | ||||
知っている情報の範囲 | 2022.01 | 2023.10 | GPT-4:2023.12 GPT-4o:2023.10 | ||
WEBの情報参照 | ✕ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
ファイルアップロード | ✕ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
データ分析 | ✕ | 2回/日 | ◯ | ◯ | ◯ |
音声会話 | ✕ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
画像の生成 | ✕ | ✕ | ◯ | ◯ | ◯ |
GPTsの利用(ストア取得) | ✕ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
GPTsの作成・公開 | ✕ | ✕ | ◯ | ◯ | ◯ |
ユーザーの管理 | ✕ | ✕ | ✕ | ◯ | ◯ |
複数ユーザーの一括支払 | ✕ | ✕ | ✕ | ◯ | ◯ |
直接接続アプリの制限(*2) | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ | ◯ |
ユーザーのグループ管理 | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ | ◯ |
アナリティクスの取得 | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ | ◯ |
*2:Teamプラン以上ではGoogleDrive、Microsoft One Driveが接続可能であり、Enterpriseプランでなければ無効化できない
成功を引き出すテクニック5選
ChatGPTがどんなものかを知る
ChatGPTは人間の言葉の意味を理解しているわけではありません。
類似のサービスを含めLLM(大規模言語モデル)と呼ばれるAIは、ユーザーが入力した文章からキーワードを抽出し、それらの関連性から「人間がこの後に期待しているであろう文章」を確率計算で抽出しているにすぎません。
そのため、特化的な固有情報を与えなければ有用度の低い一般論しか得られず、指示が不明瞭だと最初の「キーワード抽出」で重要なキーワードが漏れ、意図と異なる回答になってしまいます。
「なぜこんな結果になるんだろう・・・」
その理由がわからないまま試行錯誤するのはかなりのストレスになり、離脱の大きな原因になります。
逆に、予め「ChatGPTってこうやって動いている」ということを理解しておくことで、意図と異なる回答をされても『キーワードを強調してみよう』『固有情報を加えてみよう』と次の手が見えてくるようになり、成功に近づくことができます。
ChatGPTの仕組みについて詳しく知る方法はとても簡単です。ChatGPTに聞き、納得するまで質問すればOKです。
プロンプト(指示文)の型を使い分ける
ChatGPTへの指示文のことを「プロンプト」と呼びます。このプロンプトには大きく2種類の ”型” があります。
当サイトで推奨しているプロンプト研修「Next AI」を監修しているコンノ氏は、ご自身が提唱するコンノ式プロンプトの中で『一撃プロンプト』『教育プロンプト』という2つの型を紹介しています。
一撃プロンプトとは、指示を詳細化、構造化し、AIが仕事をするうえで必要な情報をもれなく盛り込んだ長文の指示です。
綿密に文章を組み、AIの精度が上がるように試行錯誤が必要なので準備に時間がかかりますが、繰り返し使う場合や社内で横展開する場合などには有効な手段です。
一方、教育プロンプトとは会話形式でAIの出力を徐々にブラッシュアップしていく手段です。
答えを出すための手順や知識を与えたり、AI自身に考えさせながらフィードバックを繰り返していくことで、より良い結果を一緒に探していきます。1回しか行わないケースや、まだ自分の中でも整理できていない事柄についてAIと一緒に答えを探す場合に向いています。
プロンプトの技術はネット等を検索するといろいろと見つかりますが、それらの使い所を理解し、状況やケースにあった手法を選択することが、成功への近道になるでしょう。
上手に使うためにもChatGPTを活用する
ChatGPTへの指示は詳細であるほどよい結果に繋がります。
例えば、「化粧品のキャッチコピーを考えて」と指示するよりも、「化粧品を使うのは主に誰?>その人達の悩みは何?>その悩みに刺さるキャッチコピーを考えて」とするほうが、より使える結果が得られるでしょう。
しかし、ユーザーが全ての事柄に最適な道筋を提示できるわけではありません。むしろ、専門外のことをAIに聞くような場合はそんな道筋を提示すること自体できないでしょう。
ではそんなときはどうするか。
ChatGPTに聞いてしまえば良いのです。上記のケースでは「キャッチコピーを作る時に考慮する点と最適な手順は?」と聞けば、ChatGPTが回答してくれます。今度はその手順で作業をするように指示をすれば良いわけです。
わからないことはChatGPTに聞く。その「わからないこと」に、ChatGPTの使い方も含まれるということです。
回答の雛形を与える
しっかり指示をしたつもりでも、見当違いの回答になってしまうことがあります。例えば、アンケートの分析結果に対する考察を聞いたはずなのに、データ分析や考察をするための手順を回答してくるといったケースです。
指示を組み替えて正しい回答を促すこともできますが、最初の回答があまりにも期待とかけ離れていると修正はかなりの手間になるでしょう。ChatGPTを効率的に活用するなら最初の回答を自分の期待に最大限近づけることが重要であり、それを実現する有効な手段が「雛形を与える」です。
上記のケースであれば、「回答のレイアウトは【1.データ概要】【2.アンケートからみえる優位点】【3.アンケートから見える改善点】とします。」と指示に加えれば、かなり期待に近い結果が得られることでしょう。
ChatGPTは「期待した回答を得る」ことが常に目的なので、この方法は非常に有効です。
人間相手の対策はAIにも有効
ChatGPTの仕事の質を上げるテクニックはいろいろありますが、その共通点は「人間相手と同じ」ということです。
人間同士の仕事について考えてみましょう。
相手のことを知り、経験や得意分野に合わせた指示や説明をした方が、より良い仕事をしてくれます。指示が明瞭なほど相手の仕事の精度は上がるでしょうし、答えが出ていない事柄でもブレストを通して解決策を見い出せたりします。
申請書やフォーマットが決まったドキュメンテーションなど、明確に期待する結果の形があるなら、雛形を用意しておくことで担当者間の誤差もなくせます。そうしたアプローチがAIにも有効であることは、前項で説明した通りです。
このように、人間相手に良い仕事をしてもらう工夫が、AI活用にもそのまま活きてきます。
難しく考えることはありません。「「若手や後輩に良い仕事をしてもらうにはどうしたら良いか」と考えていけば、それがそのままAI活用のテクニックになるでしょう。
絶対に見過ごしてはいけない5つの注意点
ChatGPTを使う上で絶対に気をつけなければならない注意点があります。これらを疎かにすると、ChatGPT活用で得られるメリットを超えたデメリットが生じてしまうかもしれません。
非常に重要なので、必ず押さえておきましょう。
情報漏えい
最もポピュラーの注意点がこの「情報漏えい」です。
生成AIに行った問い合わせは、OpenAI社が管理するAIサーバーに送信され、そこで処理された結果が返ってくる仕組みになっています。
このとき、非会員、無料会員、有料会員のPlusプランでは、入力した情報がAIの学習に使われてしまいます。(*)そしてそこで学習された内容は、全く別の質問者に向けた回答として使われてしまう可能性があります。
例えば、ある化粧品メーカーが「画期的な商品」を企画し、ベンダーと共同開発を始めたとします。そのベンダーはChatGPTに「画期的な商品」コンセプトを伝え、理想的な成分の配合を調べました。
ChatGPTは、この時の会話から「画期的な化粧品のコンセプト」を学習してしまいます。
その後、別の化粧品メーカーが商品開発の企画案をChatGPTと壁打ちしたときに、企業秘密であったはずの上記「画期的な商品」のコンセプトが出力されてしまう可能性が発生します。
この商品企画が特定のベンダーにしか伝えられていなかった場合、間違いなく信頼を失うでしょう。
こうしたAI自身の学習による情報漏えいは、ChatGPTを使う上で最も注意すべき問題です。ChatGPTを警戒する企業の最も多い理由もこれでした。
仕事で利用する場合、学習漏えいリスクのない上位のプラン(Team、Enterprise)や、クローズド環境での自社独自環境の構築を検討すると良いでしょう。加えて、個人情報や機密情報の入力は制限するなどのガイドラインを設け、ルールを定めて利用者のリテラシー教育を行うことも非常に重要です。
また、2024年4月に総務省と経産省がAI事業者ガイドライン(第1.0版)を公開しています。AI開発者だけでなく、利用者に向けた内容も含まれているので、企業で本格導入する場合は確認しておきましょう。
* 無料会員、有料Plus会員は設定を自ら変更すれば会話を学習されなくなる。ただしそれを会社などが管理、強制する手段はない。
著作権の侵害・喪失
ChatGPTをはじめとした生成AIは過去に学習した内容に基づいて回答を生成します。
そのため、そうした学習内容の中に著作物が混じっており、それらが丸ごとAIの回答として使われてしまうと、意図せず著作権の侵害をしてしまうことになります。
逆に、生成AIが生成したもの自体には著作権が認められないとされているため、AIが生成したものを手を加えずに自社のサービスなどに取り込んでしまうと、こちらも意図せず自社サービスの著作権を部分的に喪失してしまう可能性があります。
こうした著作権の問題は主に画像生成や創作文章(物語、エッセイ等)で取り上げられていますが、それ以外の分野でも注意しておくに越したことはないでしょう。
どんなに良い結果が生成されたとしても、公に発信する場合にはあくまで「参考」としつつ、自分たちなりに置き換えるなどのひと手間は必要と考えましょう。
ハルシネーション
「ChatGPTがどんなものかを知る」でも解説した通り、ChatGPTは無数の学習済みデータから確率で回答を導き出しているに過ぎず、常に必ず信頼できる情報ソースを持っているとは限りません。
単純にデータを取り違うこともあれば、学習時の内容が間違っている可能性もあります。
しかし、AI自身はそれが適切だと思いこんでいるため、さも事実であるように、もっともらしい回答を出力します。そして、人間がそれを信じ、誤った知識を前提に行動することで、思わぬ損害を発生させてしまう恐れがあります。
米国で実際にあった事例を紹介します。
あるユーザーが「セクシャルハラスメントの事例」を質問したところ、ChatGPTは実在する法学教授が学生との旅行の際にセクハラを行ったと回答しました。
しかしこの法学教授はセクハラの告発を受けたこともなく、該当する旅行自体も実在していませんでした。それどころか、この法学教授はセクシャルハラスメント防止の活動を行っていたのです。
しかしChatGPTは「セクシャルハラスメント」という質問のキーワードから、「セクシャルハラスメント防止運動」をしているこの法学教授を結びつけてしまい、それと他のよくあるセクハラ事例を合成して、現実とは真逆の回答をしてしまったわけです。
このように、AIは間違うことがあります。これはAIにおける大前提であり、組織としてChatGPTの活用を推進する場合には、利用者適切な教育することが重要です。
そして、ChatGPTで出力した内容を世に出す時は、必ずファクトチェックを欠かさないようにしましょう。
機密保持契約との兼ね合い
ChatGPTなどの生成AIは、その技術特性上かならずAI事業者のサーバーに質問内容を送信します。
情報漏えい対策がされた法人向けプラン(Team、Enterprise)や自社クラウド内に構築した場合でも、処理のコア部分はOpenAI側にあるため、「送信する」という事実は変わりません。
そして、この「送信」が機密保持契約に反する場合があります。
一般に、機密保持契約では機密とされた情報の「持ち出し」を禁止します。そして、OpenAIへのこの送信が「持ち出し」に当たるという考え方があります。
こうした部分は法解釈に関することであり専門家の判断が必要ですが、そもそも機密保持契約を結ぶ顧客との業務で生成AIを利用する場合、生成AIに関する情報の扱いをどうするかについて、事前に合意形成しておくと良いでしょう。
Bring Your Own AIの脅威
ここまで、多くの「注意点」について説明してきました。人によっては「こんなに問題があるなら利用を禁止すべきでは」と考えるかもしれませんが、それはむしろ逆効果でより重大なリスクを生むと言われています。
BlackBerry社の調査によると、日本企業のうちChatGPTをはじめとする生成AIの利用を禁止している企業が72%にのぼることがわかっています。
また、Microsoftが2024年6月に発表したレポートでは、日本における生成AIを仕事で活用しているデスクワーカーは32%に留まることがわかりました。
これだけを見ると、生成AIを禁止されていない企業で使われているようにも見えますが、実態は違います。この32%のうち、「自分のAIツールを職場に持ち込んでいる」と答えた人が78%、中小企業に限れば80%を超えているのです。
つまり企業がChatGPTを禁止すると、それを使うスキルを持った社員は自分が契約した(無料版を含む)AIを勝手に持ち込むという傾向が明らかになったのです。
職場に私物パソコンを持ち込んで利用することをBYOD(Bring your own device)と言いますが、こうしたAIの持ち込みはこれにちなんでBYOAI(Bring your own AI)と呼ばれています。
ここで重要なのは、BYOAIが行われるとAIの利用を企業が管理できず無法地帯化するということです。
企業が主導してAIを展開する場合、ガイドラインやリテラシー教育、監査ログといった様々な方法で正しい利用を促進、管理することができますが、BYOAIは社員が勝手にやることなので、管理の目が届かず非常にリスクが高まります。
実際にここ数年では多くのChatGPTアカウントがダークウェブに流出しています。これは、アカウント管理などのリテラシーが十分でないユーザーがいかに多いかを示しています。
しかも、社員は「仕事を効率化するため」という正義感や、「無知な会社が自分たちに無駄な労力を強いている」という怒りによってBYOAIを行うことが多く、いくら企業側が禁止を叫んでも根絶するのは困難と言われています。
会社のネットワークでChatGPTなどのAIを遮断すれば問題ない、と考える人もいるかも知れませんが、それも誤りです。今のAIは高度なOCR(画像内の文字の読み取り)機能を持っているため、ディスプレイをスマホで撮影し、ChatGPTに添付すれば普通に使えてしまいます。
また、類似のAIサービスも多数存在しており、知識のある人は自ら作ることもできるので、それらをすべてネットワークから遮断することも不可能です。
そして、BYOAIで使われるAIはほとんどの場合、無料版か個人契約の有料版です。これらは前述のとおり会話内容が学習されてしまうため、生成AIを職場で禁止するという行為は、ただただリスクを何倍にも増やすと言わざるを得ません。
独自のAIを社内展開していれば問題ないかというと、必ずしもそうとは言えません。機能制限などでChatGPTのようなSaaS版AIと著しい性能差があれば同様の問題が生じるでしょう。
考えてみれば当然のことです。たとえば今、インターネット検索を禁止すれば、ほとんどの人はスマホで調べ物をするでしょう。AIも、その水準になりつつあるということです。
今後、生成AIの利用が世の中で当たり前になるほど、こうした傾向は強まっていきます。そのため、企業はリスクだけを考えて安易に禁止するのではなく、適切な利用を前提にルールづくりや環境整備を整えていくことが急務と言えるでしょう。
ChatGPT活用の先にある6つの将来像
さて、いくつもの注意点を挙げましたが、ChatGPTの活用がそうしたマイナス面以上に様々なメリットが得られることはこれまで述べてきた通りです。
では、ChatGPTをはじめとした生成AIが定着すると、ビジネスにどのような変化が起こるかを考えてみましょう。
迅速かつ正確な意思決定
集合知を活用した素早い判断
ビジネスにおいてスピードは非常に重要な要素です。
例えば新しい取組みを始める場合、先行している競合の調査は必ず行うでしょう。あるいは、新しい技術を使う場合に一般的な使い方や注意点、作法を調べるということもよくあります。
こうした情報はChatGPTを使うことで、従来の検索よりも遥かに早く情報が得られます。もちろんハルシネーション対策は必要ですが、それを踏まえても数倍は早いと言えるでしょう。
こうした情報収集のスピードは意思決定の速さに直結します。このスピード感を維持できれば、機会損失リスクを大幅に減らすことができるでしょう。
高精度な分析結果
調査を行った時、そのレポートの精度はどうしても担当者のスキルレベルに依存します。
常にハイスキルな人材が万全な状態で十分な時間をかけて調査ができればよいですが、それは現実的ではありません。
その結果、精度の低い調査結果に基づいて行った誤った判断が、ビジネスや製品の品質に悪影響をもたらす事例は無数に見つかります。
ChatGPTを使えば、そうしたレポートに観点の抜けや誤りがないかのチェックができます。スキルが充分でない調査担当者であっても、AIの力を借りることで精度を高めることができます。
そうして質の高い調査ができる人が増えれば、意思決定のための材料はより正確かつ多角的になるでしょう。誤った判断を減らすことができれば、それを取り戻すための時間や費用も抑えることができ、結果的に収益に貢献することができるはずです。
顧客満足度の向上
顧客セグメントへの柔軟な対応
製品の購入データや使用者のレビューなどは非常に重要な判断材料です。しかし、多くの情報は整理されておらず、量も膨大であるため分析には非常に大きな労力が必要になります。
有用なデータですが、残念ながら細かい分析を様々な観点で何度も行うことは困難です。
しかし、ChatGPTの分析機能を使えば、データの整理、分析、可視化をAIに任せることができます。それも、様々な軸で繰り返し何度でも実行させることができます。
よりポジティブな年代を捉えたプロモーションを行う。
ネガティブなセグメントに対してフォローを入れる。
同じ1つのデータを限界まで使い倒し、従来とは比にならない情報を得られるようになります。そうした情報を駆使すれば、より柔軟で、より繊細なビジネス戦略が可能になるでしょう。
迅速な顧客対応
顧客対応においてもChatGPTは大きな役割を果たします。
例えば多少の誤りを許容してもらえるケースでは、電話対応を直接させることも可能です。OpenAIの最新モデル GPT-4o を使えば、ほとんど人との通話と変わらない速度でのやりとりが可能になります。
事例として、公式発表ではないもののGoogleMapではAIが直接店舗に電話し、営業時間などの情報を聞いてきたという報告がSNSで複数みられました。こうして情報の精度を上げることで、Google Map というサービスはより顧客に信頼されることでしょう。
他にも、問い合わせメールを分析させて緊急度の高いものを抽出したり、メールが使えない年代のユーザー向けにAIに電話対応をさせたりと、使い方次第では現在の精度でも充分活用を見込むことができます。
困っている時に迅速に対応してくれるほど、顧客にとって信頼されることはないでしょう。
ビジネス競争力の強化
自動化やコスト削減による生産性向上
ChatGPTを使うことで既存業務の一部をAIに担当させることができます。
報告書のたたき台をAIに作らせることで、ゼロから作るよりも必要時間を短縮できるだけでなく、網羅的な観点で質を高めることも可能です。
新人・新規参画者など、業務に不慣れな人のアウトプットをAIに一次評価させることで、高いスキルを持った人材の負担を軽減し、よりクリエイティブな仕事に時間をまわしてもらうこともできるでしょう。
こうした時間の削減は積み上げた時に真の効果を発揮します。1日あたりたとえ10分の時間軽減であっても、それが1ヶ月あれば200分となり、従業員ひとりあたり3時間以上の削減になります。
従業員が100人いると仮定した場合、削減効果は330時間となり、要員2名分に達します。こうしたコストの削減はビジネスの収益性に貢献するだけでなく、人材不足による機会損失を避ける効果も期待できるでしょう。
革新的なアイデアの創出
アイデアのベースとなるのは、これまでに見てきたもの、感じてきたものといった経験です。
そのため、1人で考えるだけでは限界があり、同じ経験や得意分野を持つ人で集まっても革新的なものを生み出すのは難しいでしょう。異業種や異なる経験を持つ人が混じり合い、それぞれでは気付けなかった観点や解決策を組み合わせることで、初めて革新的なものが生み出されます。
しかし、ChatGPTを使うことでこの状況は一変します。あらゆる役職や専門家の立場でアイデア出させたり、自分のアイデアについてのコメントを貰うことができるからです。
自分の中にある課題やアイデアについて様々な意見をChatGPTに出させ、それを自分がブラッシュアップして再びChatGPTに投げる。このサイクルを繰り返すことで、まるで多くの知見をもつ人が集まったかのようなアイデアを、1人で出すことができてしまいます。
ChatGPT有識者が最も良く使う用途に「アイデアの壁打ち」というものがありますが、まさにこういうことです。これまでにない多くのアイデアが出てくれば、間違いなくビジネスへの貢献となるでしょう。
トレーニングと教育の効率化
双方向型のトレーニングプログラム
一般的なトレーニングプログラムは自習ベースか、専門の講師がたち、講義を受けて手を動かすことによって行われます。しかし、当然ながら個人差や得手不得手があり、講師や世話係の目が届かなくなることも少なくありません。
こうした問題はこれまで、費用対効果の観点からも仕方ない部分でしたが、ChatGPTを使うことで更に細かいケアができる可能性があります。
例えば、講義後に必ず「その日に学んだこと」をChatGPTに送信し、指摘や提案を受けたり、わからない点を質問する運用を作れば、まるでマンツーマンのようなサポート体制を実現することもできます。
単に聞くだけの一方向型ではなく、ひとりひとりがフォローを受けられる双方向型のトレーニングプログラムを、人員の増加なしに実現することが可能になります。
人材教育のコストを抑制し、その分の労力を受講者のメンタルやモチベーションなど、より人間的、情緒的な部分に集中することができます。フォローによって受講者の修学状況も改善され、人材の育成や昨今話題になっている帰属意識のなさ、それによる離職の増加などの抑止が期待できるでしょう。
AI専属講師による資格取得の推進
資格取得は一般的に、参考書と問題集による自習がメインになります。
こうした学習方法で問題になるのが、参考書や問題集の解説の意味がわからない、しっくり来ないケースです。説明があやふやだったり、自分の知識と矛盾してしまったりすることが良くあります。
こういうとき、ChatGPTを使えば自分が理解できるまで何度でも丁寧に説明してくれますし、自己認識との矛盾を聞けば、今まで間違って認識していた情報を正してくれることもあります。
資格取得、個人の勉強において、ChatGPTは非常に有用なツールとなります。また、英語など語学系であれば、音声通話機能を通してヒアリングやスピーキングの練習も可能になります。
ChatGPTを用いた資格取得などを推進、奨励することで自社内の有資格者や有識者を増やすことができます。そうなれば結果的には社内の体制強化や顧客の信頼につなげることができるでしょう。
さらに、そうして資格をとる頃にはすっかりChatGPTが使えるようになり、企業にとっては有資格者とAI有識者を両方得る最高の機会となるでしょう。
グローバル展開の支援
高度な翻訳によるグローバルコミュニケーション
最近は世界中で様々なサービスが作られ、海外サービスを利用する機会も増えてきました。
サイト上の手続きだけで使えるものは良いですが、サービスによっては実際に問い合わせや営業とのやりとりが求められるものも存在します。
それに対応できる人材がいれば良いですが、そうでない場合は利用のハードルが非常に高くなり、諦めるケースも多かったでしょう。
この問題もChatGPTが解決してくれます。
たとえばメールであれば、意図を伝えて相手国の言語のメール文を、商習慣や慣習にあった形で作ってくれます。逆に、サービスの海外展開している場合、海外の顧客に失礼のないメールを誰もが作れるようになります。
出張して直接会話する場合でも、ChatGPTの音声翻訳機能を使えばまるで通訳同伴であるかのようにコミュニケーションをとることができるでしょう。
いままで困難だった言葉の壁というハードルを乗り越え、サービスの利用や提供が可能になるのです。
多言語に対応した製品の開発
海外にサービス展開する場合、当然ながら各言語版のシステムやマニュアルをつくらなければなりません。例えばWEBのシステムなら、画面に表示される文章からボタン、メニューまで、すべての「文言」を各国語に置き換える必要があります。
こうした言語の置き換えにはこれまで専門家が必要でしたが、今ではChatGPTが得意とする仕事の一つです。
マニュアル文書やシステムの言語ファイルをアップロードし、指定の言語に合わせて変換させるだけで他国語対応はほぼ完了です。厳密さが求められるシステムであれば、有識者や外部のサービスを通してチェックだけしてもらえばいいでしょう。
情報発信からアプリ、Web上のサービスまで、ChatGPTを駆使すれば海外展開も不可能ではなくなります。
持続可能な成長
属人化に陥らない業務プロセス
特定のだれかしかできない仕事というのはどこの会社にもありますが、ChatGPTを使うことでこうした属人化した仕事を減らすことも可能です。
属人化した作業について、担当者が実施している手順や不確定要素に対する対処方法の決め方、その根拠などを最大限言語化し、それらを事前に与えたGPTsを作成すれば、多くのユーザーはそのGPTsの支援を受けながら仕事をすることができます。
既存の担当者はGPTsの支援を受けた作業のチェックを行いつつ、空いた時間を使って業務改善など、有識者であることを活かしたハイレベルな仕事を行うことができます。
特定の担当者が不在だとすべてが止まってしまう。ChatGPTを活用することでそういった状況を改善することができ、より持続性の高い体制の構築が可能になります。
組織全体の貢献度の底上げ
現在はVUCA(高度に複雑化し将来の予測が困難)の時代と言われています。こうした時代では、これまでと同じことを続けているだけでは現状維持すら難しく、徐々に衰退していってしまいます。
そうした時代の中で変化や改善を見いだせる高度人材はとても貴重です。しかし多くの場合、こうした人達は既存の業務に忙殺されており、未来に向けた時間を取るのが難しいことが多いです。
ChatGPTを活用し、業務効率化や他の人材を底上げすることで、高度人材の負担を減らすことができます。そうして捻出された高度人材の時間によって、更に難易度の高い取組みを行うなど、投資的な活動も可能になります。
ChatGPTの活用は単なる「手間の削減」に留まらず、目の前の仕事に追われ続ける状況を打破し、ビジネスの改善、革新を引き起こす起爆剤になり得るのです。
ChatGPT活用に最短で進むための重要3ポイント
ここまでに述べてきた多くのポイントを踏まえ、今からどうすべきかについて3つのポイントを解説します。
イシューから始めよ
AI活用に限らず、ビジネス全般に共通する考え方として「イシューから始めよ」というものがあります。
何事も、重要なイシュー(課題)に集中し、効果的に解決することが成功の鍵である。そうすることで、限られた時間を有効活用し、適切な優先順位をつけて最も効率的に高い成果を見いだせるだろう。
という原理原則的な考え方です。しかし、実際にはこれに逸脱した取組みも少なくありません。
AIが話題になっている。自社も使わないと遅れてしまう。なにか当社にとって良い使い方を探そう。
イシューではなく、手段から入ると正しいゴールが見えなくなります。どうなれば「達成」なのか、この問題にどの程度のお金や時間を費やして良いのかが曖昧になります。
そうなれば、答えも見いだせず「永遠に終わらない情報収集」や、「他の作業によって後回しにされ続ける案件」となり、お金と時間を投資したにも関わらず、何も得られないことも少なくありません。
だからこそ、序盤の失敗しないための心構えにも書いた通り、まずは解決しなければならない課題を取組みの起点にする。
すなわち「イシュー」から始めることが、何より重要なのです。
ステップを踏め
ChatGPTが登場したばかりの頃、多くの企業が以下のようなリリースを出しました。
自社用のAIChatを構築し、全社員○○名に展開!
しかし、そうした企業から目立った続報があったかというと、残念ながらそうではありませんでした。
新しいことを始めるとき、大人数を相手に号令をかけてもうまくいきません。なぜならば、誰もそれを自分ごととして捉えないからです。
新しいことを始めるということは、決して簡単なことではありません。ましてや、日頃から業務に追われている人であれば、更に状況は困難になります。
ではどうすればよいか。
強い業務命令を与える、役割を外してAI活用に集中させる。それもひとつの手段ですが、もっと確実で効果的な方法があります。
それは、「使いたい」と自ら思った人にチャンスを与えることです。
これだけ多くの情報が発信されている注目技術であれば、自主的に使いたいと考える人は必ずいます。そういう人たちを全力で後押しするのです。
興味のある人を募集し、彼らにAIが使える環境と、使うための基礎的な知識を提供します。例えばツールを契約してアカウントを与える、研修を企画して受講させるなどです。
そうすることで、彼らは自らの興味で学習をすすめ、やがて自分の業務に活かし始めます。そうなったら、今度はその取組みや成果を大々的に評価し、広く周知します。
そこから共感する人が集まり、メリットを得たいと思う人が追従し、やがて組織全体に広がる。その段階になったら、より大きな組織課題の解決策を、彼らに考えてもらうこともできるでしょう。
どのような取組みであれ、結局は個人のイニシアチブから始まります。その起点をしっかりと作り出し、評価し、育てていくというステップを踏むことが、AI活用を広げていくうえで非常に効果的なアプローチとなるでしょう。
とにかく慣れ親しむために
ChatGPTの環境が与えられ、使い方も教わったあとに当たる壁は「どこで使うか」です。
ChatGPTの使い勝手や特性がしっかりわかってくれば自ずと見える部分ではありますが、最初のうちはいつ使って良いかがわからず、なかなか活用機会を増やすことができない、という人は少なくありません。
そんな時、おすすめしたい方法があります。
それは、検索の代わりに使ってみることです。
ChatGPTはハルシネーションを起こします。そのため、調べ物には向かないという意見もあります。
それ自体は間違いではありませんが、ハルシネーションを予め念頭に入れて使う分には、そんなに問題はありません。ChatGPTを使うことで、調査したい事柄の骨格や全体像、関連情報を得ることができるので、ファクトチェックは案外なんとかなります。
少なくとも、1からすべてを調べるよりはずっと簡単でしょう。
それに、「ChatGPTを使うタイミング」はわからなくても、従来から存在する「ネット検索」をする機会ならわかるはずです。
そうしたときに、とりあえずChatGPTに聞く癖をつけることで、自然と利用機会が増えます。利用機会が増えれば、徐々にその特性や使い方も見えてきます。
知識もないまま闇雲に使っていても効果は薄いですが、基本的な知識を学んだうえで、しっかり使う機会を増やしていけば、必ずChatGPTの利用スキルが上達します。
まずは正しい経験の量を積む。それがやがて質に繋がる。
いつまでも調査や学習だけでは一歩も前に進めません。まずは経験。その機会をしっかり設けていきましょう。
最も重要なたったひとつのこと
さて、かなりの長文に及んだChatGPT完全マニュアルも間もなく終わります。
- よくある間違い12件
- 重要機能8件
- 成功のためのテクニック5件
- 見過ごせない注意点5件
- 活用後の将来像6件
- 最短で進むポイント3件
ここまでで、ChatGPTを活用するために必要な29の要素について語ってきました。そして最後の、最も重要な最後の1つを加えて終わりにしたいと思います。
人類の歴史において、優秀な人とは常に「多くの正解を知っている人」でした。
そもそも正解を知っている人がいない。非常に少ない。だからこそ、歴史上の君主から現代の企業に至るまで、常にそうした人材を求めてきました。
しかし、AIを誰もが当たり前に使える現在、この定義が人類史上初めて変わろうとしています。
すでに将棋や囲碁などの選択肢が限られた世界では、AIは人のはるか高みに立ち、どんなプロ棋士よりも正確に「正解」を導き出します。
今の汎用AIに残るハルシネーションの問題も、いずれ解決するでしょう。そうなれば「正解」は誰でもAIを通じて知ることができるようになります。
そうなった先で、優秀な人とはどんな人を指すのか。「正解」がAIによって民主化された世界で、どんな人が求められるようになるのか。
それは、AIから得られた「正解」を自らの道具として、実際に行動し、行使する人ではないでしょうか。
現時点でも、行動する人は貴重です。ですが、正解も知る人も同様に貴重でした。
これからの時代、正解を知っているだけの人は間違いなく価値が下がります。たとえ知識を持っていても、行動し、行使しなければ、価値が認められなくなります。
セミナーなどの感想でよく「勉強になりました」というフレーズを見かけます。ですが、厳しいようですが、もしそれで満足しているなら、もはやそれはなんの意味も持ちません。
価値は、その先にあります。
勉強になった知識で、自分は何をするのか。身の回りのどんな課題を、得た知識でどう解決するのか。
最も重要なのは、行動に移すことです。
知識を得るだけでは何も変わりません。歩みを止めている場合ではありません。
AIという全く新しいテクノロジーが、人間の価値を根底から覆す転換点、それが今です。ただ座して変化を待つか、行動を起こし果実を得るか、あるいは変化をリードするか。
決断するのは今、この瞬間のあなたです。
その未来に向けた決断に、この記事が役立つことを祈っています。