「最近AIタレントってよく聞くけど何なの?」
「AIタレントってなんかよさそう。うちも使った方がいいのかな?」

最近「AIタレント」という言葉を耳にする機会が増え、伊藤園がCMで起用したことでも話題になりました。

たしかにAIタレントは画期的な存在で、今後の芸能・広告の在り方を変える可能性を大いに秘めていることが分かります。

しかし、AIタレントとはそもそも何なのか、メリット・デメリット?など知りたいことは多いですよね。

そこで本記事では、AIタレントの概要やメリット、起用事例などを紹介します。AIタレントを起用するリスクも紹介しているので、実際に自社でAIタレントを起用するかどうかの判断材料にもなります。

AIタレントに興味があったり起用を検討している場合は、ぜひ最後までご覧ください。

AIタレントとは

AIタレントは、人工知能技術を活用して創造されたデジタル上のキャラクターやパーソナリティです。実在のタレントのように、名前を持って活動しています。

AIタレントは、昨今の人工知能技術の発展により急速に活躍の場を広げ、広告やエンタメ、教育など幅広いジャンルで活動しているんです。

最近では、伊藤園がCMにAIタレントを起用したことが話題になり、実物の人間と見分けがつかないほどのクオリティに驚いた方も多いでしょう。

AIタレントは実在の人間にはないメリットを持っているため、今後はより活躍の場を広げて行くことでしょう。

なぜAIタレントが起用される?7つのメリット

現在AIタレントが注目を浴びていますが、その理由はどこにあるのでしょうか。AIタレントが持つ主なメリットは、以下の7つです。

・注目が集まる
・コストが低い
・人間にはできない表現が可能
・多言語に対応可能
・変化へ迅速に対応できる
・不祥事による降板がない
・休憩・休暇がいらない

メリットを知ると、AIタレントを使うべき場面とそうでない場面の判断がつくようになります。一つずつ見ていきましょう。

注目が集まる

AIタレントを起用すると、注目が集められるのは大きなメリットです。

2023年12月現在、まだAIタレントを起用することが浸透しているとは言えません。そのため、伊藤園のようにAIタレントを起用するとたちまちネットニュースになったりします。

つまり、このタイミングでAIタレントを起用すれば、社名を幅広い方々に知ってもらえるチャンスになるということです。

大企業はもちろん、まだ世間的に名の知れていない中小企業やベンチャー企業の場合は、自社を売り出すいい機会になるでしょう。

たとえば、広報をAIタレントにしたり、SNSでAIタレントを使って自社をアピールしたりすることなどが挙げられます。

スマートフォンが今や当たり前になっているように、AIタレントも当たり前になる時代がくるでしょう。今AIタレントを起用すれば、注目を集められるというメリットを存分に生かせます。

コストが低い

AIタレントは、実在の人物に比べてあらゆるコストが低いことがメリットです。

たとえば、実在の人物をCMに起用する場合、出演料や交通費などの金銭的コストに加え、出演交渉やスケジュール調整などの時間的コストも発生します。

対してAIタレントの場合は、開発などの初期費用こそ必要ですが、出演料や交通費、スケジュール調整は必要ありません。金銭的コストも時間的コストも抑えられますよね。

コストが低くなっても質が変わらないのであれば、AIタレントがもたらすメリットは大きいと言えます。

人間にはできない表現が可能

AIタレントは実在しているわけではないため、人間にはできない表現が可能です。

たとえば、一瞬で赤ちゃんから老人になる演出も可能ですし、自社のイメージに合った理想的な外見をイチから作ることも可能です。

実在するからこその良さもありますが、表現の幅が広がることは大きなメリットですね。

多言語に対応可能

AIタレントは言語モデルを使用することにより、あらゆる言語に対応できます。

たとえば、日本語や英語、中国語はもちろん、使用者が少ないミャンマー語やタイ語などにも対応可能です。

実在の人物であれば言語を習得するのに時間がかかりますが、AIタレントは開発段階で習得させることもできるのです。

世界進出を狙っている企業にとっては、多言語に対応できるのは大きな強みと言えるでしょう。

変化へ迅速に対応できる

AIタレントは実在の人物と違い、変化へ迅速に対応できます。

たとえば、CMを放映後、消費者の声を聞いて演出を変えたりAIタレントの外見を変えたりできます。

実在の人物であれば、契約期間や撮り直しのスケジュール調整などが絡んでくるため、難しいと言えるでしょう。

しかし、AIタレントはパソコンがあれば調整可能です。そのため、より消費者の反応を早く生かせることはメリットです。

不祥事による降板がない

AIタレントは管理できるため、実在の人物のように不祥事による降板がありません。

たとえば、不倫や脱税、薬物使用など、これまで不祥事でCM出演やスポンサー契約が打ち切りになった芸能人はたくさんいました。

企業はそのたびに、CMの撮り直しや代役探しなど、対応に追われています。これは日常の業務に支障をきたすおそれがあり、可能な限り避けなければなりません。

その点、AIタレントは不祥事の心配がないため、企業にとっては起用しやすいですよね。

休憩・休暇がいらない

AIタレントは人間のような外見ですが、あくまで人工知能です。そのため、休憩や休暇を必要としません。

実在の人物の場合は、撮影の合間に休憩を入れたり、年末年始は長期休暇を与えたりすることなどが必要になりますが、AIタレントは疲れないため、極端な話、半永久的に稼働させ続けることができるのです。

定期的なメンテナンスは必要ですが、ずっと稼働できる点はAIタレントの大きなメリットです。

AIタレントの起用事例

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現在AIタレントは注目を浴びており、起用する企業も増えています。そこで、AIタレントの起用事例として以下7つを紹介します。

・伊藤園
・タレントAI Chat
・株式会社ハイボール
・週刊プレイボーイ
・Autobabes
・MAVE:(メイブ)
・Her

どのようにAIタレントを活用しているのか、詳しく見ていきましょう。

伊藤園

伊藤園は2023年9月、AIタレントの女性をCMに起用しました。これは瞬く間に話題になり、2023年12月現在、YouTubeでの視聴回数は70万回を突破しています。

映像では、スキップする様子や緑茶を飲んでいる様子など、まるで人間のような振る舞いを見せていました。

それと同時に、老人から一気に若返るような演出も見られ、まさにAIタレントならではの表現です。

SNSでは「AIとは思えなくて凄いな。」「最初の笑顔以外は全く違和感がない。」など、驚く声が多くありました。

AdverTimes.に掲載されたインタビューによると、はじめからAIタレントを起用する予定だったわけではなかったようです。CMの演出や、実在のタレントの顔を加工で老化させても共感は得られないといった理由があり、AIタレントを起用することになったそうです。

参考:伊藤園が新商品のCMにAIタレント起用「素敵な未来の自分」加齢の表現に

タレントAI Chat

株式会社博報堂ミライの事業室と株式会社Trippyが共同で開発したAIチャットボットサービス「タレントAI Chat」では、俳優・モデルの鈴鹿央士さんをAIタレント化した「AIおーじくん」が登場しました。

参考:「AIおーじくん」公式サイト

「ChatGPT」の技術を活用したものになっており、LINE上で自由に会話を楽しめます。鈴鹿さん本人の発言を学習しているので、まるで本物とやり取りをしているような感覚を味わえるのが特徴です。

また、鈴鹿さん本人の声をもとに機械学習した合成音声により、文字のみならず音声でコミュニケーションをとることもできるのです。

これまでの芸能人の公式ラインは、会話とかみ合わない返事をしてきて、いまいち没入感に欠けるやり取りも多かったのは事実です。

その点で、「タレントAI Chat」は新たなコミュニケーションの形を築いていると言ってもいいのではないでしょうか。

株式会社ハイボール

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2023年3月、株式会社ハイボールはAIタレント「レモン」を世界初のAI広報に任命しました。

参考:株式会社ハイボールのAI広報に弊社タレントのLemonが採用されました

レモンは主にSNS上で活躍しており、2023年12月現在、TikTokでは約4,000人、Instagramでは約2.7万人のフォロワーを獲得しています。

株式会社ハイボールは2019年に設立されたばかりの会社ですが、レモンの活躍によって大きな注目を浴びています。

また、同社はAIタレント事務所「TANSAN」を設立し、企業向けにAIタレントを活用した広報やマーケティング支援を提供していくようです。

AIタレントの起用により、小さな会社が大きな注目を浴びているよい例です。

週刊プレイボーイ

2023年5月、週刊プレイボーイはAIタレントのグラビアデジタル写真集を発売しました。発売当初は大きな注目を集め、今後の芸能の在り方が変わるとさえ言われました。

しかし、発売から約1週間後、突然デジタル写真集の発売が終了したのです。

参考:さつきあいデジタル写真集『生まれたて。』販売終了のお知らせ

これには、AIタレントが実物の人物に似ていたこと、著作権侵害の可能性もある点が指摘されたことなどで消費者から問い合わせがあったことが関係しているようです。

(※AI学習に使用された学習用データに第三者の著作物が含まれていたとしても、少なくとも現行の日本の著作権法下においては、原則としてそれだけでは直ちには著作権侵害とはなりません(著作権法30条の4)。しかし、AIが既存の写真(第三者の著作物)を学習した結果、既存の著作物と類似するものが生成・出力された場合は、著作権侵害と評価されるおそれがあります。個別具体的な法的判断については弁護士等の専門家にご相談ください。)

たしかに、AIタレントには未知の可能性がありますが、それと同時にリスクが存在するのも事実です。
まだ法的な整備がされていない部分も多いため、AIタレントを活用する際には注意が必要であることがあらためて明らかになった事例と言えます。

Autobabes

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2023年、オーストラリアの車雑誌「Autobabes」では、7月号の表紙をAIモデルのジーナ・スチュワートさんが飾ったことで話題になりました。

参考:EXCLUSIVE:Playboy bunny creates world’s first AI model based on younger self to relive glory days, reveals ‘men love’ her digital persona that has been featured on magazine covers across the globe

実はジーナ・スチュワートさんは実在しており、52歳のオーストラリア人なのですが、AIモデルの方は28歳のカリフォルニア出身のアメリカ人という設定だそうです。

実在のモデルがいるとはいえ、AIタレントの活躍と呼べるでしょう。

MAVE:(メイブ)

MAVE:(メイブ)は、2023年1月25日にデビューした、新生K-POPガールズグループです。しかし、ただのガールズグループではなく、メンバーは全員、現実には存在しないバーチャル上のメタアイドルなのです。

参考:MAVE:ZONE

現実には存在しないとはいえ、PVを公開すれば1,000万回を超える再生回数をたたき出すなど、人気はすさまじいです。

AIタレントは、アイドルの在り方さえ変えていってしまうのでしょうか。

Here

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「Here」は、2024年公開予定のアメリカの映画です。「フォレスト・ガンプ/一期一会」でタッグを組んだ3者が再び手を組むということで、話題になっています。

この映画の中で、トム・ハンクスとロビン・ライトを若返らせて登場させる予定のようです。これにはAI技術が使われており、「正しいAI技術の使い方」と今から期待されています。

「芸能人の若いころを再現してタレント活動をする」という新しい形も、出てくるかもしれませんね。

AIタレントを起用するリスク

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AIタレントは実在の人物にはできないことができるため、メリットがあります。とはいえ、もちろんAIタレントを起用するうえでリスクがあるのも事実です。

AIタレントを起用する主なリスクは、以下の4つです。

・倫理的問題が発生するリスク
・著作権を侵害するリスク
・人間の理解を得られないリスク
・技術的問題が発生するリスク

リスクを知っていれば、「知らなくて後悔した」という事態を防げます。詳しく見ていきましょう。

倫理的・法的問題が発生するリスク

AIタレント起用は、現状、常に倫理的・法的問題をはらんでいるといえます。
人工知能という技術は日進月歩で変化が早く、それに伴う法的な整備や社会的なコンセンサスの形成が十分に追いついているとはいえないため、細心の注意を払う必要があります。

例えば週刊プレイボーイの例のようにAIタレントが実在の人物に似ていた場合、肖像権の侵害につながる可能性があります。また、実在の人物に似ているAIタレントに不適切な言動を行わせた場合などは、名誉棄損の罪に問われる可能性もあるのです。

さらに、AIタレントが発信した情報が間違っていた場合、管理元の企業が責任をとることになります。「間違った情報を発信するなんて信用できない企業だ」と思われてしまう可能性もあるでしょう。

AIタレントの起用にはこのような倫理的・法的な問題が生じるリスクがあるため、適切に管理する必要があります。

著作権を侵害するリスク

AIタレントは言葉を発したり歌を歌ったりすることができますが、それが著作権を侵害してしまう可能性があります。

たとえば、AIタレントが既存の曲によく似た曲を歌ったとします。それはたとえ人工知能が出力した情報だとしても、類似性が認められれば著作権侵害になってしまうおそれがあるのです。

実際に文化庁は2023年6月、AIと著作権について以下のような考え方を示しています。

既存の著作物との「類似性」及び「依拠性」が認められる場合、そのようなAI生成物を利用する行為は、① 権利者から利用許諾を得ている② 許諾が不要な権利制限規定が適用される……のいずれかに該当しない限り、著作権侵害となります。

引用元:令和5年度 著作権セミナー「AIと著作権」|文化庁著作権課

AI関連については現在、法整備が進んでいますが、まだ十分とは言えません。AIタレントを起用する際には、著作権侵害に注意しましょう。

人間の理解を得られないリスク

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AIタレントは人間にはできない表現ができるため魅力的ですが、すべての人間がそれを受け入れられるかはまた別の話です。なかには、自分の仕事を取られるかもしれないと焦り、拒絶する人もいるでしょう。

たとえば、これまでCMに出演していたのに、AIタレントを起用することになったために契約解除になったらどうでしょうか。「AIタレントに自分の仕事を奪われた」と感じますよね。心中穏やかではないはずです。

実際に、16万人の組合員がいるハリウッド最大規模の「全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)」は、AI使用におけるルールの制定などを求めて118日間にも及ぶストライキを決行しました。これは、俳優たちがAI活用により自分たちの仕事がなくなることを恐れての行為でした。

参考:全米映画俳優組合のストライキ、ついに終結!スタジオと暫定合意

このように、説明が不十分なままAIタレントを起用すると、コスト削減どころか今後の企業存続が危うくなる可能性すらあるのです。

AIを活用したコンテンツを見るのは人間ですから、人間の理解を得ることも必要と言えるでしょう。

技術的問題が発生するリスク

AIタレントは今や、実在の人物と見分けがつかないほどになっています。中途半端なクオリティだと、かえって不信感を抱かれてしまいます。

たとえば、顔の動きと目の動きが合っていなかったり、言葉がつたなく明らかに合成音声だとわかってしまったりする場合などです。

とはいえ、AIタレントを作成して動かすには、ある程度の技術が必要です。どの企業でも簡単にできるものではないでしょう。

そのため、AIタレントを作成して動かすだけの十分な技術がないと、顧客が離れていってしまうというリスクがあります。

AIタレントを作成する技術がない場合は外注するなどして、クオリティの高いものを届けられるようにしましょう。

まとめ

AIタレントとは、人工知能技術を活用して作られたデジタル上の存在です。昨今では、実在の人物と見分けがつかないほどに進化しています。

AIタレントは、実在の人物と比べてコストが低かったり不祥事による降板がなかったりと、多くのメリットがあります。実際に、ベンチャー企業から大手企業まで、AIタレントを起用するケースは増えています。

とはいえ、倫理的問題や著作権の問題など、AIタレントにはまだまだ課題があるのも事実です。今後のAIタレント活用においては、法整備と人々の理解がポイントになってくるでしょう。